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18. 赦し

サガはオルクスと共に次元の果てにいた。
せめて自分の命が尽きるまでは、この神を異次元に留める事が出来るだろう。
海皇の力は既に解放し、カノンはやがて救われる。

サガはオルクスの顔を正面に見た。重力に縛られないこの世界は、サガにとって相手の大きさや高さが弊害ではなくなる。

「その大きさ、異次元こそ墓場に相応しかろう」

そう言ったサガは、ふとオルクスの黒い瞳に秘められた深い哀しみを目にする。

「哀れな神よ……」

耐えきれず、目を伏せる。もう二度と手に入らない栄光を求めて邪神となり果てたその姿が、自分の過去の罪と重なる。
しかし、その一瞬の隙をサガは突かれた。

心臓が破れかけていても尚、未だ力を失わないオルクスがサガを捕らえる為に手を出した。

「……っ!」

サガは気配に気付きすぐに回避したが、たったの一瞬オルクスの哀しみに同情した事により不完全なものとなる。

(しまった……! 足を取られた)

オルクスの巨大な手がサガの右足を捕らえ、その勢いのまま、サガを自らの破れた心臓に押し込めた。
そして取り込んだサガの力を糧にして、心臓の傷を塞いでいく。

「……っぐ、ああっ!」

サガは必死で足掻いたが、そうすればするほどオルクスの封印に深く嵌っていく。
海皇さえも自ら逃れる事は出来なかった、不可逆の世界。
これが神の力か、とサガは思い知る。

足から徐々に、死の神の心臓に溶けていくのを感じる。

(邪神の礎になるとは、滑稽な末路だ)

サガは心の中で嘲笑した。
やがてサガの体はほぼオルクスの心臓に融け、首から上がかろうじて原形をとどめている状態となった。
途切れ途切れに吐く息が、酷く冷たい。

(もう……限界だな)

サガは薄れゆく意識の中、自らの終幕を悟る。
今更、死への恐怖などない。双子座を継ぐ者もいる。

弟。

少し躊躇った後、サガはその笑顔を思い起こした。


お前を抱いてしまった私をいつか許してくれるだろうか
あの秘密の日は、私と共に異次元に消える

今はただ、お前の幸せを願う


その時、色を失ったサガの瞳に、黄金の光が映った。

(翼……?)

サガはぼんやりと、それを見た。

「サガ! しっかりしろ!」

その力強い声は、射手座の黄金聖闘士アイオロスのものだった。
サガの瞳に僅かに力が戻る。

(…ロ、ス……!)

「オルクス、私が相手だ」

(駄目だ、ロス……こいつに触れたらお前も取り込まれる)

サガは残った微かな小宇宙で語り掛けた。

「お前をこのまま死なせたりはしない!」

アイオロスの決意の声が異次元に響く。
しかし異次元での戦闘は初めてだったアイオロスは、流動せずに留まる事がやっとの状態であった。
肉弾戦で巨人に触れないようにするのは難しい。

(射手座の矢で、心臓を撃ち抜け)

「できるわけないだろ、お前がいるのに!」

アイオロスが声を荒げた。

(やらなければならない時がある事くらい分かってるだろ! ロス……、それに)

サガはアイオロスにしっかりと焦点を合わせ、微かに動く口の動きで伝える。

「お前になら、この命、奪われてもいい」

「サガ……」

アイオロスは声を詰まらせた。
こんな結果になる為に、ここに来た訳ではなかった。
サガを守り抜く強い意志が、絶対の自信となって今まで自分を支えてきた。

しかし今、自らの命ごと勝利を奪えとサガが望んでいる。

アイオロスはぎり、と唇を強く噛むと、サガを見据えて矢をつがえた。
涙を流す訳にはいかない。
絶対に視界を曇らせる訳にはいかなかった。

「外さないからな、サガ」

オルクスの心臓に、ほぼ全身を取り込まれたサガが、分かっているというように、ふっと微笑んだ。


アイオロスの矢が、彼の手を離れた瞬間。


オルクスの頭上で異次元が裂ける。
まるでビッグバンの様に輝く光が降り注ぎ、そこから現れたのは、鱗衣を纏い海皇の鉾を持ったカノンだった。

それに気付いたオルクスは、頭上を仰ぎ見る。
カノンの迸る海の小宇宙、そして碧く広がる髪がオルクスの視界を覆った。


――ティレニア海に


オルクスの瞳が、遥か太古の海の色に染まる。


――永遠の、栄光を……


「海神の怒り……受けろ!」

カノンはそう叫び、ポセイドンの力が宿った鉾でオルクスの脳天を貫いた。その勢いの凄まじさで、巨人が二つに割れる。
それとほぼ同時に、鼓動の止まったオルクスの心臓にアイオロスの矢が貫通し、胸部が弾け散った。
まるで硝子の破片の様に四方に散るその中からサガが解放され、後方に吹き飛んでいく。

「サガ……!」

次元の狭間に消えゆくサガを見てアイオロスは叫ぶ。

(くそっ……! この距離では間に合わない!)

その時、カノンに続いて異次元に現れたラダマンティスがサガに向かって飛んだ。
異次元に到着した瞬間、迷わず双子の兄の元へ飛んだその判断により、漆黒の翼の持ち主は間一髪でサガを抱き留める事が出来た。


「……ラダ! サガは……」

カノンがそう言って、サガを抱くラダマンティスの元へ向かう。

「死んではいない、が、だいぶ無茶をしたようだな……」

そう言ってラダマンティスは、同じく近くに来たアイオロスに、そっとサガを託す。
アイオロスはサガをしっかりと抱き、ほっとした様子で深く息を吐いた。

「カノン、頼みがある。オルクスと俺を冥界へ送ってくれないか。後はこちらの仕事だ」

カノンはそう言われて、ラダマンティスの顔を見る。
その表情は既に恋人のものではなく、冥界の三巨頭、翼竜のものだった。

「ああ、分かった。ラダ……」

小さな痛みがカノンの胸に走った。しかし、そんな痛みを感じている状況ではない。
カノンはぐっと拳に力を込めた。

小宇宙を高め、巨大な残骸とラダマンティスを冥界に送る三角形を創り出す。
ラダマンティスはカノンを振り返った。

「カノン……?」

カノンの碧い瞳に僅かに寂しげな色を認めたラダマンティスは、思わずカノンの名を呼んだ。
しかし、それと同時に眼前の視界が歪み、ラダマンティスは死の神の骸と共に冥界へと戻された。



「さあ、俺達も聖域へ帰ろう。サガを手当てしないと」

異次元の静寂の中、アイオロスがカノンに語り掛ける。
カノンは心配そうに、アイオロスの腕の中で眠るサガを見た。

目を覚ましたら、言いたい事がいっぱいある。

兄さん。

「帰ろう、双児宮へ」

お知らせ(3/10更新)

◆自家通販は現在行っておりません。
◆次回のイベント参加予定は2019年2月10日(日)開催予定の「GALAXYμ」(大阪)です。
◆2013年に寄稿した『雨のおと、魂のこえ』という短編を全文公開しました。オフラインから見ることができます。

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書いている人

名前:みなみ椿
サークル名:Spiral
地域:東海圏

・ライブラA型
・カプ固定(サガカノ・LCアスデフ)
・字以外は左利き

同人活動は2010年06月から開始。
オフ活動は2012年11月から開始。

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